Fintech その3

去年の第二企業課題のテーマは東工大発のロボットベンチャーHiBot社に対して破壊的技術を用いたサービスを提案するというものでした。

破壊的技術というコンセプトはHBSのクレイトン・クリステンセン教授の著者「イノベーションのジレンマ−技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」に出てきますが、TAはこのコンセプトについてそれがなんたるか、受講生にどう伝えるとわかりやすいか等議論し、テーマとしてかなり盛り上がりました。

すごく面白い本なので時間があれば読んだらいいと思いますが、要点はウィキペディアにまとまっています。私の理解では、つまるところ、破壊的技術の要件は次のようなものです。

  • 新しい競争軸を提示する(だから、既存顧客の声を聞いていては生まれないもの)
  • 既存市場を破壊する

この要件を念頭に、資産運用ビジネスにおけるFintechのひとつ「ロボアドバイザー」(企業名ではなく、コンセプト名)が破壊的技術に該当するか少し考えてみました。

ロボアドバイザーは、端的に言うとファンドマネージャーに変わって資産運用を行うアルゴリズムのことです。投資する対象の選定をロボットがやるからロボアドバイザーといいます。

ロボアドバイザーが提供している大きな価値のひとつは、運用手数料を大幅に低下させることと初期投資資金の小口化ですが、それ以外にユーザーフレンドリーなインターフェースを構築して使い勝手を良くしたり、他のサービスと連携したり、投資家層を拡大するための取り組みを拡充しています。

今の所、私が知る範囲では新しい競争軸を提示する前に大手の運用会社に買収されたり、自前で始めてまだ目覚ましい成果が出ていないので、そもそも「破壊的技術」の要件に該当するか検討するレベルに至っていないように思います。

一方で、日本は潜在的な投資家層が厚く、金融リテラシーも高いので(※)、ユーザーの利便性と価格の透明性が高いサービスの構築を通して、新しい競争軸を提示することができれば、一気に業界地図が塗り替わるような気もします。

とはいうものの、どーやら、米国のロボアドバイザーの先駆け2社が苦戦しているようなので(前回リンクを貼ったFinTech研究会の資料参照)、まずはその詳細を調べるところから始める必要がありそうです。

ではでは。

※金融リテラシーの高さと、リスク選好性には相関はないと思っています。金融リテラシーが高いからといって、リスクとるわけではなくて、高いが故にリスクをとらないという選択肢もあります。日本人の家計に占める現金保有率の高さ(日銀のレポートによる53%)を理由に金融リテラシーが低いと一般化されているきらいがありますが、個人的には必ずしもそうではないと思っています。