アントレプレナーシップ論 オープンスクールテキスト
第7章 実践的技術
- 7.1. プレゼン・ソフトでの発表資料の作り方
- 7.2. 表計算ソフトで見る事業収支予測の仕方
- 7.3. インタビューとアンケートの仕方
- 7.4. 調査 ――インターネットを使った調査――
- 7.5. 初年度には教えていて今は教えていないこと
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7.1. プレゼン・ソフトでの発表資料の作り方
(本文より一部抜粋)
プレゼン・ソフトはお絵かきソフトではなくて「アウトライン」と「マスタ」を使うソフトだと考えておきましょう。
(中略)
目次は重要です。発表を聞く相手はこちらが話すことを知らないので、こちらが思っている以上に理解するのが大変です。理解を深める最良の方法は最初に全体像を伝えることです。それには目次が役立ちます。分かりやすい目次を作っておくことは相手の理解につながります。
また、目次の項目が多すぎる場合(7個以上)場合は、グルーピングして数を減らすと相手の理解を助けることができます。
項目が変わる際に、中目次のページを使うことで話が変わることを意識しやすくすることができます。目次のレベル1の段階が変わる際には中目次のページを入れると効果的なことが多いです。
7.2. 表計算ソフトで見る事業収支予測の仕方
(本文より一部抜粋)
題材は「SNSポータル事業」です。
売上= (単価1:表 示)×(ページ表示回数)
+(単価2:クリック)×( クリック定数 )×(ページ表示回数)
となります。
この式の1つひとつの要素を見ると「事業収支改善施策」として、
1) 表示、クリックの際の単価を上げる
2) クリック定数を上げる(クリックされる方が単価が高いので)
3) ページ表示回数を増やす
があることがわかります。
(中略)
3)の「ページ表示回数を増やす」に関してはさらに要素分解ができます。
3) ページ表示回数
├3)-1初回訪問者数
└3)-2 リピート訪問者数
となります。
(中略)
細かいようですが、こうした1つひとつの施策による事業収支改善を盛り込むことで事業計画が充実してきます。
7.3. インタビューとアンケートの仕方
(本文より一部抜粋)
いい事業計画を作る方法は1つしかないと言ってもいいくらいです。それは「聞いて聞いて聞きまくる」ことです。お客さんにも、競合にも、業界の識者にも全部聞いてしまえば、少なくともその業界にいる人と同等には業界のことがわかります。業界の人以上には分かりませんが、聞きまくればそれに近づくことはできます。
(中略)
聞くことがすべての始まりなのですが、聞いたことが必ずしも正しくないこともありますので注意が必要です。聞いた相手が間違った理解をしていることもありますし、こちらが聞いたことを間違って理解してしまうこともあります。聞いたことには裏付けをとる調査も必要です。
7.4. 調査 ――インターネットを使った調査――
(本文より一部抜粋)
講座で、毎年、訪問先の企業や最終発表会で指摘されることがあります。それは「君たちの話はグーグルで検索すればすべて出てくることだが、調べなかったのか」という指摘です。
受講生が調べていないわけではありません。若い人の方がインターネットは身近なものです。調べていても調べ方が浅いのです。浅くなってしまう理由は、
(1) 多面的なキーワード検索をしていない
(2) 「業界大手の企業なら当然やっているはずだ」という見方がない
(3) データベースにアクセスしない(無料のものであっても)
というものです。「自分が考え付くくらいのことは他の人も簡単に考え付くだろう」という視点やこんなところにはこんな情報があるはずだという予測する感覚が身に付いていないのが原因です。
(中略)
また、特許庁の特許電子図書館(IPDL)の特許のデータベースはとてつもない優れものです。2000年に起こったビジネスモデル特許の大ブーム以降、ビジネスモデルに関するアイディアは必ずと言っていいほど特許出願されています。事業を考える人はこのデータベースを使わない手はありません。使い方はグーグルなどの普通の検索エンジンと同じです。私の経験では、二つのキーワードでアンド検索をするとおおよそ、30個程度の特許に絞り込むことができます。これらを調べると、世の中の人がどこまで考えているのかが大よそ分かります。
7.5. 初年度には教えていて今は教えていないこと
(本文より一部抜粋)
この講座の初年度の様子は『理系人間のための経営戦略入門』(実業之日本社)という書籍にまとめました。
(中略)
上場企業2社を選んで、その会社の現在の株価に株式数を掛けたものを「実時価総額」と教えました。そして、それぞれの会社の今年の純利益額でその「実時価総額」を割ってもらいました。
財務論を正確に教えると、純利益ではなく営業キャッシュフローやフリーキャッシュフローなどを使うべきですが、純利益を近似値として使ってもらいました。
割ってみて、10倍なら、その純利益が10年は続くだろうと世間が思っているということ、20倍なら20年は続くだろうと世間が思っているだろうと思っているということです。
(中略)
現在教えていないのは、講座を受講してすぐ上場を目指す起業をする人はほとんどいないからです。投資に関する意思決定の考え方として、企業の価値について話しました。