学生が社長に向かって「御社にはこのビジネスプランが必要です」と言うために、必要なこと〜第一企業課題を振り返る

14.06.14アントレプレナーシップ論講座最終発表会ポスター_アウトラインなし のコピー

  • 経営者から課題をもらい、「大義」と「チームワーク」について学ぶ

 当講座は一般的なビジネスプランコンテストとは異なり、オリジナルの事業案を考える前に企業課題と呼ばれる2つの課題をこなします。異なる企業の経営者が、実際に経営で困っていることを課題として出題します。そして受講生はそれぞれ1ヶ月かけて課題に取り組み、最後に経営者の前でプレゼンテーションを行います。
 この期間に、受講生はチームメンバーと正面から向き合い「チームワーク」について学びます。また、経営者と深く議論をすることで、トップのエネルギーや覚悟を感じ、「自分がなぜそれをやるのか」「なぜそれが正しいのか」といったビジネスをする上での「大義」についても学ぶことになります。遠回りしているようですが、最終的に自分たちの事業案を考えるときに必要なことを効率よく身につけるステップとなっています。

 

  • 大切なのは「顧客」と「経験者」の声に耳を傾けること

 2つの企業課題では例年、最初の課題が「主に成長分野の製品におけるマーケティング戦略」、二番目が「技術シーズをビジネスに結びつけるための経営戦略」となる傾向があります。扱うモノやサービスの特性が異なっても「適切な人に、適切なタイミングで、適切な方法でモノやサービスを届けて対価を得る」というマーケティングの基本的な部分を学ぶという点で本質は同じです。当講座では、マーケティングについて考える際に、顧客と経験者の声を積極的に聞きに行くことを重要視しています。

 

  • 第一企業課題は電力ファシリティ分野からの出題

今年の第一企業課題は、政府が注力する産業分野の一つであり、今後大きなビジネスチャンスがあると考えられるエネルギー分野からの出題となりました。中でも今後5年で急速な市場拡大が見込まれる電力ファシリティ分野に注目し、電力測定装置の開発・製造・販売を行う株式会社Sassorから「Sassor社の電力測定装置を用いて、新しい価値あるサービスを提案せよ」という課題をいただきました。

  • スタートでつまずき、それでも踏ん張り成長する受講生たち

 第一企業課題が始まって2週間、受講生は課題そのものよりも「チームワーク」の難しさについて学んだ期間だったと思います。ついていけず早々にリタイアした人もいましたし、コミュニケーションに慣れず解散したチームもありました。一方で、困難な状況だからこそリーダーシップを発揮する受講生や、モチベーションの下がったメンバーの心に再び火をつけようとする人も出てきました。
 3週目からやっと各チームが本格的に動きはじめました。聞きたい項目の整理やヒアリングの計画立案が徐々にできるようになり、ヒアリングやアンケートによる仮説検証サイクルを回すことができるようになってきます。始めは前提も曖昧で何を答えたらいいのかわからないアンケートを作成してしまっていたチームも、課題の最後には旅館25件へのヒアリングに成功して運営側を驚かせるまでになりました。

 

  • 自分たちの至らなさに気がついた最終プレゼンテーション

 そして1ヵ月間課題と向き合い、経営陣を前にしたプレゼンテーションの時を迎えます。どうしても伝えたいという熱い気持ちや真剣さが運営側にも伝わってくる発表でした。受講生ひとりひとりが感じた「大義」を、発表に反映することができていたのではないかと思います。しかしニーズの深掘りまではできたものの、経営陣からはビジネスモデルの具体性やマネタイズの実現可能性に対する思慮の浅さを指摘されました。
 受講生の多くは、誰よりも製品を理解しているはずの経営陣に向かって「御社にはこのビジネスプランが必要です」と戦略を語るには相当の覚悟が必要であると痛感したことでしょう。課題をこなす上で求められているレベルの高さと、実際に自分たちが持っている能力との大きな差に気づき、この悔しさをバネに第二企業課題に取り組んで欲しいと思います。