アントレプレナーシップ論 オープンスクールテキスト

第3章 事業計画


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3.1. なぜ事業計画を学ぶのか

(本文より一部抜粋)

投資家が投資先を決める時も「事業計画が良いから」ということはほとんどありません。あなたが投資するならどんな会社に投資しますか。美しい事業計画を書ける会社ではなく、事業の中核メンバーがすごい熱意を持っている会社ではないでしょうか。そのくらいのことは、事業計画など学ばなくても感覚として分かるはずです。

それなのに、なぜ、この講座では事業計画を学ぶことにしたのでしょうか。

理由は、「型にはめながら学ぶことで物事をうまく成し遂げる頭の使い方を訓練する」ことができるからです。ほとんどの人は事業を考える天才ではないので何もないところから事業を考えるのは大変なことです。ひな型を使って学ぶ方が断然学びやすいです。


3.2. 事業計画の構成要素

(本文より一部抜粋)

事業計画の構成要素は、研究報告書の項目や特許明細書の項目と似ています。つまりものごとを筋道を立てて説明する標準的な構成要素からできているということなのです。

○事業計画の構成要素の例と書くべき内容
No 構成要素 書くべき内容
1 エグゼクティブ・サマリー
・このページを読むだけで、この人たちの話を聞いてみたいと思える内容。
・自分たちがやりたいこと、それを求めている人がいること、今までなぜそれが提供されていなかったのか、自分たちがどうして初めてそれを提供できるのか、が簡潔に説明されているとよい。
2 事業ビジョン
・事業が実現したいこと。
・それが実現されることで誰がどんな風に喜ぶのか、実現するために自分たちが何をするのか、が説明されているとよい。
3 市場分析・参入機会
・市場規模、競合、自分たちの優位性など
4 ビジネスモデル
・自分たちの事業の構造を簡潔にまとめたもの。
・誰がお金を払ってくれるのかは必須。
・彼らがなぜ払うのかが書かれていると強力。
5 マーケティング
・自分たちがねらうお客さんが誰で、彼らに何をいくらでどうやって売っていくかについて。
6 事業戦略
・競合に対してどうやって打ち勝っていくかについて。
7 オペレーション
・事業をどう運営していくかについて。
8 事業収支・財務計画
・事業がどの時点でどれだけ損失と利益を出ししていくかについて。
9 リスク・マネジメント
・ベストを尽くして事業を進めたとしても起こりうる失敗の可能性について。
10 組織と経営チーム
・事業に携わる関係者について。

自分がやりたいことをこの構成で書きだしてみたくなりませんか。


3.3. 将来を見据えるか今すぐか

(本文より一部抜粋)

将来を予測する方法には、自分たちで想像する方法と、各省庁や国の研究機関などが提言している将来像を利用する方法の二つがあります。もちろん、二つを組み合わせて考えることもできます。
(中略)
将来の予測は、ぜひやってほしいことです。社会の大きな流れのなかに自分たちがやろうとすることを位置付けて、自分たちの事業の存在意義を見つけ出すことができるからです。将来を予測したからといって良い事業計画ができるとは限りません。しかし、将来のことを考えずに事業計画を考えると、視点が自分の生活圏からなかなか抜け出せません。

未来は作られるものではなく、自ら作るものなのです。


3.4. 事業戦略と事業計画

(本文より一部抜粋)

「戦略」と「計画」についてアントレプレナーシップ論オープンスクールの中で議論になったことがありました。戦略と計画は違うものだという視点を持てたことはたいしたことだと思います。
(中略)
戦略は、「あの山の方から攻めよう」というような“責任者が決めた基本的な考え方”、計画は「そのためにはいつまでに何丁の鉄砲を山のふもとまで誰がどうやって運ぶのか」という戦略を実現するための“こまごました作戦”というイメージです。もちろん“こまごま作戦“の中にもさまざまな工夫を織り込むことはできます。


3.5. ビジョンと収支

(本文より一部抜粋)

受講生から、事業計画を考える際、ビジョンが大事なのか、収支が大事なのかという質問をよく受けます。受講生からするとビジョンは「社会のためになることをする」というきれいなこと、収支は「儲けるためなんらなんでもする」という汚いことのように対立して見えてしまうようなのです。講座では、ビジョンと収支は決して対立するものではない、と伝えています。
(中略)
事業計画は未来への地図です。事業計画を作ることが目的ではありません。その地図をたどって未来にたどり着くとことが目的です。我々の宝物は、我々が考え出した未来です。その未来に向かっていく地図が事業計画なのです。