アントレからどんな影響を受け、今何をやっているの? 〜アントレリユニオン2008の報告〜
2015年1月24日に、アントレリユニオン2008を行いました。今回でアトレリユニオンは5回目となりました。2008年の受講生は、シンガポールや韓国、ドイツなど海外で働いている人も多い中、2008年受講生7名、TA3名、その他年度2名、アントレ主催柴田さんの合計13名が集まりました。
主催の柴田さんからのアントレ紹介後、スピーカーとして、山崎さん、芥川さん、石川君より発表をしてもらいました。それでは、今回のリユニオンの内容について紹介します
2008年のアントレ講座と現在のアントレ講座を紹介
最初に柴田さんからアントレの2008年当時の取り組みと現在のアントレ講座についての説明が行われました。話題としては、エン・ジャパン株式会社から頂いた課題で当時社長の越智さんから語られた刺激的なコメント、企業課題を頂いた大田区の中小企業と受講生の講座後の関係、広島県知事湯崎さんにプレゼンを見てもらったこと等を話しました。
また、受講生同士のコミュニケーションのあり方が2008年当時とは変わっていることも述べられました。LineやFacebookなどのツールを使うようになり、資料の共有や長文を使うコミュニケーションが出来ず、チームの立ち上がり初期に苦労するという話がなされました。
またTAの小野澤さんから「3ヶ月間でアントレを受講したことがどういうふうに役に立った?」という質問がリユニオン参加者に投げかけられました。参加者からは
- 決められていないことをやることに対する抵抗は減った。
- 自分で課題を見つけてやるという仕事のスタイルが役にたった。
- 人生のあり方を考えるきっかけとなった。
- 当時は社会人として参加した。計画を立てて、実行するというプロセスがとても参考になった。
- 仲がいい友達が出来た。
といったコメントが出ました。
続いて、当時の受講生からのアントレの受講後の現在について語ってもらいました。
山崎 麻耶さん「アントレ後、今、そして未来」
当時、社会人としてアントレを受講し、チーム2に所属して、「外国人支援のビジネスプラン」を検討しました。アントレの受講をきっかけとして、かけがえのない仲間と出会いました。アントレ終了後には、会社に在籍しながらアントレ関係者のサポートを得て、NPO「子供HAPPY化計画」を設立しました。
その後、神戸と富山で初めての地方暮らしを経験し、結婚をしました。今は子育ての真っ最中です。仕事や自分の心身、家族の変化など、20代後半は人生の棚卸し期と言える時期で、大変でしたがこれから新しいステージが始まる予感がしています。ただ、転職や結婚、出産などを経て、一般的に女性のキャリア形成は難しいといいますが、自分もまさしくその典型と感じています。
今は、モノやお金に依存しすぎない新しいライフスタイルを目指して、脱・東京を考えていて、2〜3年後に、地方に移住ができればいいと考えています。既存のキャリアの築き方ではなく、オリジナルで行くしかないので、近い将来は「自分」×「子育て」×「田舎」という3つのキーワードで生きていく方法を考えています。「自分」はキャリアがないですが、やる気はあります。「田舎」は、雇用はなく、課題がたくさんあります。「子育て」は時間がないが、楽しみはあります。この3つをつなげて何かするとしたら、アントレで学んだことが活かせると思います。
ただ、地方の課題といっても、地域によって違いがあります。例えば富山の魚津では、一人暮らしの女性や老人の家の雪かきなどはビジネスとしてもニーズがあると言えますが、お店などは冬の集客が課題になります。ほかには、街自体が大型チェーン店などの資本が商店街を潰してしまって面白くなくなっていて、個人で頑張っているお店等、心や人の手のこもったやりとりは逆に東京など都会のほうが多いかも、と感じました。ただ、東京と比較して、人口が少ない為、ユニークな人はよく目立ち、繋がりやすいし、何かをする時に規模感がコンパクトなのは面白いと可能性を感じています。
今後は、子育てをしながら、地域と人に喜ばれる活動、セラピー、一人図書館、地域おこし、自給自足的生活など、様々なことにチャンレンジしたいと思っています。
芥川 麻衣子さん 2008年以降の活動
アントレ受講時はニコン人事部に在籍していて、入社2年目の時でした。現在は、株式会社タクミインフォメーションテクノロジーに在籍し、SAS(統計解析ソフトウェア)に特化した分析を行っています。
アントレ受講の動機は、「子供の入院環境をよくしたい」そのためにビジネスを学びたいという思いがありました。アメリカの小児病院では、子供が喜ぶ様なカラフルな壁紙が貼ってあったり、入院している子供の心理的なケアをする専門職(チャイルド・ライフ・スペシャリスト)が在籍しています。日本もそうなればいいと思っていました。しかし、日本では、保険制度に組み入れないと環境整備をしづらいという現状があります。子供の遊びの環境を整えることは、いいことだとみんな思うけれど、リスクを考えると規制に走ったほうが良いというふうに判断してしまっています。
そこで私は仕組みを変えたいと思いました。起業して、社会に働きかけ、世の中にないことをやり始めたいと思いました。当時、ETICにお世話になっていたのでそこでアントレ講座を紹介してもらいました。
アントレ講座受講後、ニコンをやめて、病院に転職しました。ニコンでは、教育研修の部署だったので、人事として専門性を高めるためにも、小さな組織で仕事をしてみたかったからです。300床ほどの病院で、仕事を通じて病院経営に触れる機会が出来ました。そうして、病院経営に興味をもつようになり、仕事をやめて、大学院に進学しました。
大学院では「医療マネジメント」という、領域を学びました。医療の実務現場では統計学に力を入れていたので、研究室の配属で統計学の研究室を選びました。物事を定量化して、意思決定に活かしたい。そんな思いで、統計分析を重点的に学びました。大学院では、論文を投稿して学術雑誌で発表したり[1]、データ解析コンペに応募し、受賞をしたりしました[2]。大学院卒業後は、今の会社でSASのプログラマーとして、プログラムの仕事をしながら学んでいます。プログラムによって、大規模な解析が出来ます。自分の思いとしては、引き続き研究に近いところとパイプを持っていたかった。そして、統計分析を使って、エビデンスを元に、社会に発信できるようにしたいと今では思っています。また、会社での活動以外にも、発達障害の方のための就職応援をしている株式会社kaienでプロボノ活動もしています。[3]
どうして、「子供の入院環境をよくしたい」と思ったのかといえば、すごく強い原体験があるわけではありませんが、高校生の時、一日看護体験をした際に自分が思い描いていた像とは違っていたという経験をしたこと、また両親が医療関係の仕事をしていたので、医療に親しみを持っていたということ、また、テレビを見て、チャイルド・ライフ・スペシャリストという仕事があるのを知ったことなどの体験を通じて、徐々に思いを強めていきました。
石川 幸佑さん これまで取り組んできたプロジェクト
私は、大学卒業後2年間IT系の広告会社で働き、ソフトウェアの開発、ハードウェアの保守・運用を経験しました。旅が好きなので南米に1ヶ月訪問した後で、環境のコンサルティング会社に転職しました。
環境問題のコンサルティング会社では、海外での仕事として、日本の中小企業の技術を途上国で活用することの支援(ODA関連)、植林事業を行いました。また、国内では被災地での再生可能エネルギー創出のプロジェクトマネジメント、省エネのコンサルティング、排出権を活用した企業のCSR支援など環境に関するプロジェクトを幅広く経験してきました。
さて、以上は仕事としての経験になります。今日は、これまで私が取り組んできたシゴト以外のプロジェクトをご紹介させていただきます。
2008年にアントレ講座を受講後、2009年に「チームで学ぶマーケティング講座」(http://team-marketing.jp)という学部生向けのアントレ講座を立ち上げました。アントレとの違いは、学部生を対象としていること、そして学生が運営することです。その年の受講生が翌年の講座の企画運営を担っていきます。2015年で7年目となり、今もアントレの姉妹講座として続いています。
また、2013年には「カンボジアに映画館をつくろう!」(http://www.catic.asia)というプロジェクトを立ち上げまして、2015年1月にNPO法人となりました。カンボジアには映画館は14しかありません。これは、ポルポト政権時代に文化人が虐殺され、映画館は壊されてしまったからです。また、ベトナム、ラオス、タイの隣国は電化率が65%以上ですが、カンボジアは17.2%で電気を使うことが難しい地域が多くあります。
このような背景から子どもたちは映画を見る機会が極めて少ないのです。「映画」という言葉を知らない子どももいます。そこで私達は、移動映画館という形式で、カンボジアにプロジェクター、スクリーンそして上映作品を持参して、現地の学校などで上映会をしています。上映作品はアンパンマンの作者でもあるやなせたかしさんの「ハルのふえ」を現地のクメール語に吹き替えて上映しました。作品を違法に上映するのではなく、製作会社や上映会社と交渉した上で上映しています。生前やなせさんからも応援のコメントもいただくことができました。
映画を見てもらうことだけでなく、関連したワークショップも実施しています。映画は最後に関わったスタッフのエンドロールが流れますが、このとき映画に関連した音楽も流れてきます。子ども達はとなりの教室から映画の中で流れていたフルートの音色に気づき、となりの教室には本物のフルート演奏者がその曲を演奏しています。
写真4 映画に関連するワークショップ(フルートを吹いてみよう!)
子ども達は映画で目にしたものに触れることで、その夢をもっと身近に感じてもらえればと思って企画しました。私達はこれまでクラウドファンディングからご支援をいただき、1200人以上のカンボジアの人々に映画を届けることができました。そして、今年2015年2月23日に日本武道館で開催される「みんなの夢AWARD5」(http://www.yumeaward.org/228)というイベントで共同代表の教来石が発表をする機会をいただきました。
最後に、カンボジアのプロジェクトはIT系の企業に在籍していた際に習得したITのスキル、環境問題のコンサルティング会社でのODA関連の経験が大いに役にたっています。スティーブ・ジョブスも「Connecting the Dots」と言っていましたが、どこでのどんな経験がつながるかはわかりません。今はコンサルティング会社から独立し、スタートアップ企業の支援を行っていますが、多くの人とつながって世界を変えていければと思います!
まとめ
以上、2008年受講生3人のプレゼンを紹介し、様々な活動を頑張っているOB、OGたちの現在をお伝えしました。
今後のリユニオンのスケジュールは 2006年(2/28) 2009年(2/21) 2010年(2/21) 2011年(2/14) 2012年(2/14) 2013年(3/7) 2014年(3/7) で開催します。2月は毎週土曜日開催です。さてさて、当時の受講生は、どんな活躍をしているのでしょうか。楽しみです。
[1] 「小児医療における医師の患児への説明と治療の意思決定者に関する研究」 日本医療・病院管理学会誌掲載。
[2]「研究活動の年次推移および人々の生活実感への影響に関する分析」 第1回データサイエンス・アドベンチャー杯入賞
(http://www.sascom.jp/AAC/2014/index.html)
「我が子との幸せな時間のために-ソーシャルメディアを使用した育児の実態の把握と対応に関する分析」 第1回データビジネス創造コンテスト 優秀賞
(http://dmc-lab.sfc.keio.ac.jp/prize/)
「国立病院機構における診療看護師(JNP)の卒後教育プログラム開発」 受託研究
[3] http://yokohama.etic.or.jp/camp/wp-content/uploads/entry_no1.pdf